毎年1月に米ラスベガスで開催されるコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(通称「CES」)では、Chromebookの新製品が発表されます。
この記事では、2019年1月8日から11日にかけて開催されるCES2019で発表されるChromebookニューモデルを順次まとめていきます。
目次
ASUS
ASUSは、2019年1月3日に開催されたプレカンファレンスにおいて、4機種のChromeOSデバイスを発表しました。
教育現場向けにデザインされた製品群で、4モデル共に米軍用規格MIL-STD-810Gの耐衝撃テストをクリアした堅牢性を備えたモデルとなっています。
筐体デザインは、現行モデルでMILスペックを有するChromebook Flip C213NAを踏襲したデザインに統一されています。細かい窪みがあり、滑りにくい表面仕上げは持ちやすく、外縁部と角部を保護するラバーバンパーのおかげで安心して持ち運びできるC213系の筐体デザインは、非常に実用性に富んでいて、教育現場のみならず、モバイル端末としてChromebookを使うユーザーに刺さるはずです。
(参考)ASUS Chromebook Flip C213NAを買いました ― 購入レビュー
ASUS Chromebook Tablet CT100PA
発表された4モデルのうちの1つは、ASUSとしては初となるChromeOSタブレット端末「ASUS Chromebook Tablet CT100」。教育現場では電子教科書やノートとして活躍しそうなモデルです。
スペックは既存のChromeOSタブレット端末 Acer Chromebook Tab 10とほぼ同等です。
- (スペック概要)
- CPU:OP1・Chromebook用ヘキサコアプロセッサ(1.6GHz ー 2.0GHz) ※RockChip RK3399
- RAM:4GB
- ストレージ:32GB eMMC
- ディスプレイ:9.7インチ 液晶(1,536×2,048) マルチタッチ
- ネットワーク:IEEE 802.11a/b/g/n/ac, Bluetooth V4.1
- インターフェイス:USB Type-C×1, microSDカードスロット, オーディオ・ジャック
- カメラ:2MPフロントカメラ、5MPリアカメラ
- バッテリー駆動時間:不明
- 寸法:172.2 x 238.8 x 9.98 mm
- 重量:0.58kg
- その他:EMRスタイラス
雑感
教育現場では十分なスペックかもしれませんが、2019年モデルとしてスペックだけを見ると、正直なところ、やや古さを感じます。
搭載CPUのOP1は、これまでSamsung Chromebook Plus(2017)、ASUS Chromebook Flip C101PA(2017)、Acer Chromebook Tab 10(2018)に採用されてきた実績あるCPUですが、登場から2年が経過しているため、処理によってはモッサリしているように感じるときがあります。
また、OP1は、Androidアプリの動作を含めChromebook用に最適化したCPUとしてリリースされましたが、ChromeOS端末でのAndroidアプリの動作は、画面サイズに合わせた拡大ができない、画面の方向に合わせて回転できない、そもそも動作しないなど不安定な部分を残したままです。
Twitterでの反応をみると、Androidタブレットに代わるデバイスとして期待する声が散見されます。確かに、2年も経過しないうちにメーカーによるOSアップデートが放置されてしまうAndroidタブレットに比べれば、ChromeOSは定期的にアップデートされる点で安心できますが、Androidアプリを動作させる端末としてみると、現時点では不完全です。
反響が大きいモデルだけに、リリースされるまでに、Googleにはユーザーの期待を裏切らないレベルまでAndroidアプリの動作水準を上げて欲しいものです。
ASUS Chromebook C204MA
かわいらしい青と白のカラーリングで人気のあったASUS Chromebook C202の後継モデル「ASUS Chromebook C204MA」。ニューモデルは万人受けする黒・灰のシックなカラーリングに変わりました。
スペックはChromebookとして標準的なものですが、MILスペックをクリアしながら重量1.1kgに抑えられているので、モバイル性能に優れています。教育現場以外でもニーズはありそう。
- (スペック概要)
- CPU:Intel Celeron N4000(1.1GHz) Dual Core
- RAM:4GB
- ストレージ:16GB / 32GB eMMC
- ディスプレイ:11.6インチ HD+(1,366×768 45%NTSC または 1,280×800 タッチスクリーン・178°視野角)
- ネットワーク:IEEE 802.11a/b/g/n/ac, Bluetooth 5.0
- インターフェイス:USB Type-C×2, USB Type-A×2, SDカードスロット, オーディオ・ジャック
- カメラ:HDウェブカメラ
- バッテリー駆動時間:不明
- 寸法:292 x 199 x 19.5〜20.1 mm
- 重量:1.1kg
source : ASUS.com Chromebook C204MA 製品ページ
雑感
スペックをみると、おそらくChromebookとして初となるGemini Lake世代のSoCプロセッサーIntel Celeron N4000を搭載している点に注目できます。
GeminiLake世代のプロセッサーは、これまでたくさんのChromebookに搭載されてきたApolloLake(Celeron N3350等)やBraswell(Celeron N3050等)世代のCPUに比べて大幅に性能を向上しています。
CPUMARKベンチスコアでは、前世代ApolloLakeのCeleron N3350に比べて、シングルスレッド性能30%、総合スコアは40%アップしています。
CPUMARK 1400台は、Dell Chromebook 11(2014)やAcer Chromebook C720に搭載されていたIntel Celeron 2955Uと同等の性能です。これらのモデルは、Google Octane2.0ブラウザベンチで14,000前後をマークしており、Chromeブラウザが非常に快適に動作していたので、GeminiLake世代のCPUを搭載したChromebookも快適な動作が期待できます。
2019年 スタンダードモデルの本命。
でも、発売時期は2019年後半…。
ASUS Chromebook Flip C214MA
現行機種であるChromebook Flip C213NAの後継モデル「ASUS Chromebook Flip C214MA」。C213NAからの正常進化モデル。
スペックは前述のC204MAより強化されていて、上位のCPU、8GBメモリ、64GBストレージ搭載モデルも準備されているようです。
- (スペック概要)
- CPU:Intel Celeron N4000(1.1GHz) Dual Core / Celeron N4100(1.1GHz) Quad Core
- RAM:4GB / 8GB
- ストレージ:32GB / 64GB eMMC
- ディスプレイ:11.6インチ HD+(1,366×768 50%NTSC または 1,366×768 50%NTSC タッチスクリーン・178°視野角)
- ネットワーク:IEEE 802.11a/b/g/n/ac, Bluetooth 5.0
- インターフェイス:USB Type-C×2, USB Type-A×1, SDカードスロット, オーディオ・ジャック
- カメラ:8メガHDウェブカメラ
- バッテリー駆動時間:不明
- 寸法:292 x 199 x 19.5〜20.1 mm ※
- 重量:1.1kg ※
- その他:EMRスタイラス
※C204MAと同じになっており誤記の可能性あり
雑感
C204MAをベースとしながら各項目の性能を強化し、フリップ機能、ワコムEMRスタイラスペンを備えた全部入りモデルです。
このクラスのChromebookとしては、8GB RAMや64GBストレージが目を引きますが、一番注目したいのは上位CPUのCeleron N4100です。これもGeminiLake世代のCPUで、C204MAに搭載されるN4000との違いはコア数となります。N4000が2コアであるのに対して、N4100は4コアです。
コア数の違いは大きな性能差に表れていて、CPUMARKベンチスコアでは、Celeron N4000に対してシングルスレッド性能は10%程度低下しますが、総合スコアでは約60%アップとなっています。Chromebookで、このスコアであればかなり快適な動作が期待できます。発売時期は2019年春先。
2019年 迷ったらコレかもしれんね。
ただ、これだけのスペックなら、もう少しディスプレイ解像度を上げて欲しかった。
ASUS Chromebook C403NA
ASUSがリリースした4モデルの最後の1台は、教育現場向けの大型ディスプレイ搭載モデル「ASUS Chromebook C403NA」です。
スペックは、前述のC204MA、C214MAと比べると一世代前の仕様です。
- (スペック概要)
- CPU:Intel Celeron N3350(1.1GHz) Dual Core
- RAM:4GB
- ストレージ:32GB eMMC
- ディスプレイ:14インチ HD+(1,366×768)
- ネットワーク:IEEE 802.11a/b/g/n/ac, Bluetooth 4.2
- インターフェイス:USB Type-C×2, USB Type-A×2, microSDカードスロット, オーディオ・ジャック
- カメラ:HDウェブカメラ
- バッテリー駆動時間:11時間
- 寸法:343 x 234 x 19.5〜20.3 mm
- 重量:1.68kg
source : edgeup.ASUS.com
雑感
CPUはApolloLakeのCeleron N3350を搭載しており、なぜかこのモデルだけ旧世代のスペックです。また、ディスプレイは14インチに大型化しておきながら、解像度はFHD(1,920×1,080)ではなく、11.6インチモデルと同じHD+(1,366×768)です。
C204MAとC214MAが完全に新開発モデルであるのに対して、おそらく、このモデルは現行モデルのASUS Chromebook C423NAの中身を、耐衝撃性能の高いボディに収めたモデルでしょう。
なので、MILスペックのタフネスボディが欲しい人でない限り、このモデルを待つ必要はないでしょう。
ASUS Chromebook Flip C434TA
CES2019の初日1月8日に、プレカンファレンスでは触れられなかったハイパフォーマンス・モデル「ASUS Chromebook Flip C434TA」が発表されています。米Amazonでのベストセラー・モデルであるASUS Chromebook Flip C302CAの正常進化モデルです。
スペックはIntel 第8世代 Core(Core Yシリーズ)プロセッサを搭載するなど、Chromebookとしては非常にハイスペックな仕様となっています。
- (スペック概要)
- CPU:Intel Celeron i7-8500Y(1.5-4.2GHz)、i5-8200Y(1.3-3.9GHz)、m3-8100Y(1.1-3.4GHz) デュアルコア
- RAM:4GB / 8GB
- ストレージ:32GB / 64GB / 128GB eMMC
- ディスプレイ:14インチ FHD(1,920×1080) sRGB100%
- ネットワーク:IEEE 802.11a/b/g/n/ac, Bluetooth 4.0
- インターフェイス:USB Type-C×2, USB Type-A×2, microSDカードスロット, オーディオ・ジャック
- カメラ:HDウェブカメラ
- バッテリー駆動時間:10時間
- 寸法:321 x 202 x 15.7 mm
- 重量:1.45kg
雑感
CPUは前モデルC302CAに搭載されていたIntel 第6世代から2世代進んだ第8世代Coreプロセッサを搭載し、前モデル比で性能が約2割アップしています(CPUMARKベンチスコア Core m3-6Y30:3051 → Core m3-8100Y:3612)。C302CAでも素晴らしくスムーズな動作をするため、ニューモデルの素晴らしいパフォーマンスを期待できそうです。
ディスプレイが前モデルの12.5インチから14インチに大きくなり、重量も1.2kgから1.45kgに若干重くなったため、モビリティ性能を気にする声もあるようですが、C434TAはわずか5mm幅のベゼルを実現しているため、本体サイズ(水平投影面積)はほとんど変わっていません。
細かく見れば本体の厚みが2mm、重量が250g増えてはいますが、これと引き換えに、スタイリッシュな超薄型ベゼルのメタルボディを手に入れているので、外出先でのルックスを重視する人にとっては、むしろモビリティ性能は向上していると言っても良いかもしれません。
また、前モデルC302CAでは、12.5インチ・ディスプレイでFHD表示すると文字が細かくなりすぎて実用に耐えられない点が気になっていましたが、ニューモデルC434TAの14インチディスプレイであれば、この点も改善されるはずです。前モデルの弱点を確実に潰している良モデル。
Chromeブラウザをスムーズ&高速に使いたい人は買って損はないでしょう。
2019年、米Amazonベストセラー候補。
Acer
AcerからはChromebook1機種が発表されました。
Acer Chromebook 315
Chromebookとしては初となるAMD製CPUを搭載した「Acer Chromebook 315」です。
スペックはAMD製CPUを搭載している点を除けば、特徴的な部分はありません。
- (スペック概要)
- CPU:AMD A6-9220C(1.8-2.7GHz)、A4-9120C(1.6-2.4GHz)
- RAM:4GB / 8GB
- ストレージ:32GB / 64GB eMMC
- ディスプレイ:15.6インチ HD+ / FHD(1,920×1080) タッチ機能オプション
- ネットワーク:IEEE 802.11a/b/g/n/ac, Bluetooth 4.2
- インターフェイス:USB Type-C×2, USB Type-A×2, microSDカードスロット, オーディオ・ジャック
- カメラ:HDウェブカメラ
- バッテリー駆動時間:10時間
- 寸法:380.54 x 256.28 x 19.95 mm
- 重量:1.8kg
source : ACER PRESS
雑感
2019年に「AMD製プロセッサ搭載」と聞けば、誰もがRyzen Mobileを期待するはずだ。しかし、実際はA6 / A4という古いCPUだった。
こんなガッカリはない。
搭載されているA6-9220C / A4-9120Cは、Chromebookのために準備されたと発表されていますが、そのベースとなるCPUは、製造プロセスが28nmという古く効率の悪いA6-9220 / A4-9120です。
諸元を見ると、Chromebook用のA6-9220Cは、A6-9220の省電力版であるA6-9220eを調整(クロックスピード1.6-2.4GHz→1.8-2.7GHzに向上)した上で、GPUをRadeon R4からRadeon R5にグレードアップしたものだろう。
AMDは、A6-9220C / A4-9120Cが、多くのChromebookに搭載されているIntel Celeron Nより高速だと主張していますが、それは現行モデルに搭載されているApploLake世代(Celeron N3350、N3450)に対してであり、ASUS製Chromebook 2019年モデルに搭載されているGeminiLake世代(Celeron N4000、N4100)には劣りそう。
ただし、Radeon R5は、GeminiLakeに搭載されているiGPU Intel UHD Graphics 600よりも高性能なので、ゲームやグラフィックス関連ではAMD A6-9220C / A4-9120C の効果が出そう。
ゲームやグラフィックスを重視するユーザーがChromebookを買うかどうか知りませんが…
HP
HPは、CES2019でChromebookを2モデル発表しています。
HP Chromebook 14
HPが発表した1つは、前述のAcerと同じく、AMD製CPUを搭載した「HP Chromebook 14」になります。
スペックは前述のAcer Chromebook 315の下位モデルとほぼ同じです。
- (スペック概要)
- CPU:AMD A4-9120C(1.6-2.4GHz)
- RAM:4GB
- ストレージ:32GB eMMC
- ディスプレイ:14インチ HD+(1,366×768)
- ネットワーク:IEEE 802.11a/b/g/n/ac, Bluetooth 4.2
- インターフェイス:USB Type-C×2, USB Type-A×2, microSDカードスロット, オーディオ・ジャック
- カメラ:HDウェブカメラ
- バッテリー駆動時間:9時間
- 寸法:337 x 226 x 18.2 mm
- 重量:1.54kg
source : HP PRESS
雑感
前述のAcer Chromebook 315と同じ。
HP Chromebook x360 14 G1
HPには、AMD ChromebookのみのAcerと違って、もう1台あって良かった。もう1台はハイパフォーマンスモデル「HP Chromebook x360 14 G1」です。
スペックだけ見ると、2019年1月現在、もっとも高速なChromebookになりそうです。
- (スペック概要)
- CPU:Intel Pentium、Core i7-8650U、i5-8350U、i3-8130U
- RAM:16GB
- ストレージ:32GB / 64GB eMMC
- ディスプレイ:14インチ FHD(1,920×1,080)
- ネットワーク:IEEE 802.11a/b/g/n/ac, Bluetooth 4.2
- インターフェイス:USB Type-C×2, USB Type-A×1, microSDカードスロット, オーディオ・ジャック
- カメラ:HDウェブカメラ
- バッテリー駆動時間:13時間
- 寸法:325.5 x 227 x 16 mm
- 重量:1.61kg
source : HP PRESS
雑感
Intel 第8世代Coreプロセッサ(Uシリーズ)を搭載していることが最大の魅力です。特に、Core i7-U搭載モデルは、現行で最も高速なChromebookである Acer Chromebook Spin 13にも用意されておらず、超高速なChromeOSの動作は、Chromeboxでしか体験することができませんでした。このため、HP Chromebook x360 14 G1はCore i7-UでChromeOSを体験できる唯一のChromebookになります。
ただ、Core-Uシリーズや16GB RAMを搭載する一方で、ストレージ容量が64GBまでしか準備されていない点はチグハグな印象を受けます。
スピードジャンキーのためのChromebook。
周辺機器
CES2019ではChromebook本体だけでなく、ChromeOS端末用の周辺機器が発表されました。
Brydge Wireless Desktop Keyboard and Touch Pad
Google Pixel Slate用のワイヤレス・キーボード「G-Type」を製造しているBrydgeから、ChromeOS用ワイヤレスキーボードとタッチパッドが発表されました。
Pixel Slateの本体色ミッドナイト・ブルーと同色のアルミ製ボディは、非常にシンプルでクールなデザインです。USB Type-Cによるバッテリー駆動で、バッテリー持続期間は6ヵ月。
いずれも今春に99$で発売されるようです。
これを使うためだけにChromeboxを買うレベルのカッコよさ
まとめ
更新完了。
CES2019ではたくさんのChromebookが発表されましたが、最後に発表されたASUS Chromebook Flip C434TAが全部持っていった気がします。
2019年はASUSの時代になりそうだ。